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歯ぎしり・食いしばりが気になる方へ|ナイトガードを検討する前に知っておきたいこと

こんにちは。歯科医師の加藤です。
診療をしていると、次のようなご相談を本当によくいただきます。
「朝起きるとあごがだるくて、歯ぎしりをしていると言われました」
「仕事中につい歯を食いしばってしまい、奥歯が痛い気がします」
「ナイトガードを勧められましたが、本当に必要なのか分かりません」
歯ぎしりや食いしばりは、本人が自覚しにくいことも多く、「何となく違和感はあるけれど、そのままにしてしまっている」という方も少なくありません。その一方で、放置すると歯が欠けたり、知覚過敏が強くなったり、あごの関節や頭痛・肩こりなどに影響することもあるため、早めに正しく理解しておくことが大切です。
「ナイトガード」は、歯ぎしり・食いしばりへの対策としてよく名前が挙がる装置ですが、「つければすべて解決する魔法の道具」ではありません。役割や限界を知ったうえで、「自分にとって必要か」「どのタイミングで作るべきか」を考えることが重要です。
この記事では、歯ぎしり・食いしばりが起こる背景、放置した場合に起こり得る影響、ナイトガードの基本的な役割と注意点、ご自宅でできるセルフチェックや日常生活で意識したいことなどを、歯科医師の立場から分かりやすくお伝えします。
「とりあえずマウスピースを作ればいいのかな」とお考えの方が、少し立ち止まって判断する材料になれば幸いです。
1 歯ぎしり・食いしばりとは何か
一口に「歯ぎしり」と言っても、その現れ方にはいくつか種類があります。
寝ている間に歯を左右にギリギリとこすり合わせるタイプ、上と下の歯を強く噛みしめてしまうタイプ、カチカチと小刻みに噛むタイプなどがあり、総称して「ブラキシズム」と呼ばれます。
特に日本語でいう「歯ぎしり」は、横方向のギリギリという動きをイメージされることが多いのですが、実際には「食いしばり」の方が目立つ患者さんも多くいらっしゃいます。昼間の仕事や運転中、家事をしているときなどに、無意識に歯をグッと噛み合わせている状態も、歯やあごにとってはかなりの負担になります。
原因は一つではなく、ストレスや緊張、噛み合わせの癖、生活習慣、姿勢、睡眠の質など、さまざまな要因が絡み合っていると考えられています。
「ストレスが原因だと聞いたから、自分の性格のせいなのかな」と自分を責めてしまう方もいますが、歯ぎしり・食いしばりは多くの人に見られる現象であり、必ずしも異常というわけではありません。問題になるのは、それによって歯やあご、周囲の組織に「実際のダメージが出ているかどうか」です。
2 どんなサインが出ていたら要注意か
歯ぎしりや食いしばりそのものは、本人では気づきにくいことがよくあります。その代わり、「結果として出てくるサイン」に目を向けることが大切です。
たとえば、次のような状態が続いていないか、一度ご自身のお口の中や体の感覚を振り返ってみてください。
- 朝起きたときに、あごのだるさやこわばりを感じる
- 起床時にこめかみや頬のあたりが重い、痛いと感じることがある
- 歯の噛む面がすり減って、平らになっている場所がある
- 冷たいものがしみやすくなった歯が増えてきた
- 詰め物や被せ物が頻繁に外れたり欠けたりする
- 頬の内側や舌の側面に、歯型のような跡がついている
- 肩こりや頭痛が慢性的にあり、朝が特につらい
これらのサインが複数当てはまる場合、歯ぎしり・食いしばりが背景にある可能性が高いと言えます。もちろん、すべてが歯ぎしりに直結するわけではありませんが、歯科医院で一度チェックしておく価値は十分にあります。
3 放置した場合に起こり得るトラブル
歯ぎしりや食いしばりを長期間放置すると、歯やあご、筋肉、関節に少しずつ負担が蓄積していきます。
まず、歯そのものへの影響としては、エナメル質のすり減りや欠け、ひび割れなどが挙げられます。エナメル質が薄くなると、冷たいものや甘いものがしみやすくなり、知覚過敏の症状が出やすくなります。また、ひびが深くなると、最悪の場合は歯が割れて保存が難しくなるケースもあります。
詰め物・被せ物へのダメージも見逃せません。強い力が繰り返しかかることで、接着剤が負けて外れやすくなったり、被せ物そのものが欠けてしまったりすることがあります。「何度直しても同じところが壊れる」という場合、背景に歯ぎしり・食いしばりが潜んでいることは珍しくありません。
あごの関節や筋肉への影響としては、顎関節症のような症状が現れることがあります。口を開け閉めするときの音や痛み、開きにくさ、頬やこめかみの筋肉の疲労感などが代表的です。これらは頭痛や肩こりと結びついていることも多く、日常生活の質に影響することがあります。
このように、歯ぎしりや食いしばりは「ただの癖」と片付けてしまうには影響が大きく、早めに気づいて対策を検討することが大切です。
4 ナイトガードの役割とできること・できないこと
4-1 ナイトガードの基本的な仕組み
ナイトガードとは、主に就寝時に装着するマウスピース型の装置で、上下どちらかの歯列に透明なシート状の樹脂をフィットさせたものが一般的です。
歯科医院で型取りを行い、その方の歯並びに合わせて作製するため、既製品に比べて適合が良く、装着したときの違和感が少ないのが特徴です。
厚みや硬さ、覆う範囲などにはいくつか種類があり、歯の状態や症状、噛み合わせの特徴に応じて選択していきます。
4-2 ナイトガードで期待できる効果
ナイトガードの主な役割は、以下のような「防御」と「負担の分散」です。
- 歯同士が直接ぶつかるのを防ぎ、エナメル質のすり減りや欠けを抑える
- 歯ぎしりの力をマウスピース全体で受け止め、特定の歯にかかる負担を軽くする
- 関節や筋肉にかかる負担をやわらげ、朝のだるさや痛みの軽減につながることがある
- 噛み合わせの位置を安定させることで、筋肉の緊張を一定程度コントロールする
あくまで一般的な傾向ですが、これらの効果によって、症状が和らいだり、トラブルの進行をゆっくりにしたりすることが期待できます。
4-3 「治す」のではなく「守る」ための装置であること
ナイトガードについて特にお伝えしたいのは、「歯ぎしり・食いしばりそのものを治す道具ではない」という点です。
ナイトガードを装着しても、寝ている間の歯ぎしりや食いしばりの行動自体が完全に消えるわけではありません。むしろ、「歯ぎしりの力の行き先を変えている」とイメージしていただく方が近いかもしれません。
つまり、目的は「歯や関節を守ること」と「負担を分散すること」であり、「原因そのものを取り除くこと」ではないのです。
そのため、ナイトガードだけに頼るのではなく、ストレスや生活習慣、姿勢、日中の食いしばりの癖など、背景にある要因にも目を向けていくことが大切です。ナイトガードは、その総合的な対策の一部として位置づけるとよいでしょう。
5 ナイトガードを検討するタイミングと適した人
では、どのような状態のときにナイトガードの使用を検討するとよいのでしょうか。
一つの目安は、「歯や詰め物に具体的なダメージが出始めているかどうか」です。エナメル質のすり減りやひび、詰め物の頻繁な脱離などが見られる場合、歯ぎしり・食いしばりによる力の影響を減らす目的でナイトガードを使用する意味は大きくなります。
もう一つは、「朝のあごのだるさやこわばり、頭痛などが日常生活に支障をきたしているかどうか」です。症状の程度や頻度によっては、ナイトガードによって負担を和らげることで、日々の過ごしやすさが改善するケースも少なくありません。
ただし、全員に一律で必要というものではありません。歯の状態や年齢、生活スタイル、他の治療との兼ね合いなどを総合的に見たうえで、「今の時点で作るべきか」「しばらく経過観察でよいか」を判断していきます。
「歯ぎしりがあると言われたから、すぐにでもナイトガードを作らなくては」と焦る必要はありませんが、気になる症状がある場合は、一度歯科で相談しておくと安心です。
6 市販のマウスピースとの違い
ドラッグストアやインターネットでも、歯ぎしり対策用のマウスピースが販売されています。こうした既製品と、歯科医院で作るナイトガードとの違いについても、よくご質問をいただきます。
市販品は手軽に入手できる反面、「自分の歯並びにぴったり合っているわけではない」という点に注意が必要です。合っていないマウスピースを長期間使い続けると、特定の歯やあごの一部に力が集中し、かえって負担が増えてしまう可能性もあります。
また、噛み合わせのバランスが適切に保たれていないと、あごの位置が不安定になり、筋肉や関節への違和感につながることもあります。
歯科医院で作るナイトガードは、歯型やかみ合わせの状態を確認したうえで作製し、装着時の当たり方も調整していきます。そのため、長期的に使うのであれば、基本的には歯科医院での作製をお勧めします。
市販品が絶対に悪いというわけではありませんが、「試しに使ってみたらかえってあごが痛くなった」「眠りにくくなった」と感じた場合は、そのまま我慢せず、一度歯科で状態を確認してもらうことをお勧めします。
7 日常生活で見直したい習慣とセルフケア
ナイトガードの有無にかかわらず、日常生活の中で意識できるポイントもいくつかあります。
代表的なのは、「日中の歯の接触時間を減らす意識」です。リラックスしているとき、本来は上下の歯はわずかに離れており、唇は閉じていても歯同士は触れていないのが自然な状態です。
ところが、集中してパソコン作業をしているときや、運転中、スマートフォンを見ているときなど、無意識に歯を噛みしめている方は少なくありません。
ふと気づいたときに、「今、自分の歯はくっついていないかな?」とチェックし、「歯と歯の間に紙一枚分のすき間をイメージして、そっと力を抜く」ことを習慣にするだけでも、あごへの負担を軽くする助けになります。
また、睡眠の質や姿勢も影響します。寝不足や不規則な生活、長時間同じ姿勢での作業が続くと、体全体の筋肉が緊張しやすくなり、その一環として歯ぎしり・食いしばりが強くなることがあります。無理のない範囲で、ストレッチや入浴など、体の力を抜く時間を意識的に取り入れてみてください。
カフェインやアルコール、喫煙なども、睡眠の質や筋肉の緊張に関わることがあります。すべてをやめる必要はありませんが、「寝る直前は控えてみる」といった工夫も一つの選択肢です。
8 歯科医院で相談するときに伝えてほしいこと
歯ぎしり・食いしばりについて歯科で相談される際は、次のような情報を伝えていただけると、原因の整理や治療方針の検討に役立ちます。
- 症状が気になり始めた時期と、きっかけに心当たりがあるか
- 朝起きたときのあごや頭の状態(だるさ、痛みなど)
- 歯がしみる、詰め物がよく外れるなどの具体的なトラブルの有無
- ご家族から「歯ぎしりがうるさい」と言われたことがあるか
- 仕事や生活の中で、特に集中する時間帯やストレスを感じる場面
- 既に市販のマウスピースを使用している場合は、その使用感
こうした情報と、お口の中の状態(歯のすり減り方、歯ぐきの状態、噛み合わせ、関節や筋肉の触診など)を合わせて評価することで、「今、どの程度の対策が必要か」「ナイトガードが適しているかどうか」が見えてきます。
「まだ受診するほどではないかもしれない」と感じている段階でも構いませんので、気になることがあれば遠慮なくお話しください。
9 まとめ|ナイトガードは「最後の一手」ではなく、総合的な対策の一部
歯ぎしり・食いしばりは、多くの方に見られる現象であり、「あるから即異常」というものではありません。
大切なのは、その結果として歯や詰め物、あごの関節、筋肉などにどの程度の負担がかかっているかを把握し、「今のうちに守っておいた方がよいかどうか」を考えることです。
ナイトガードは、歯や関節を守り、負担を分散するうえで有効な選択肢の一つです。しかし、それだけに頼るのではなく、日中の食いしばりの癖や生活習慣、ストレスとの付き合い方なども含めて、総合的に見直していくことが、長い目で見たときの口の健康につながります。
「ナイトガードを作るべきか迷っている」「自分の歯ぎしりがどの程度問題なのか知りたい」という段階で、一度歯科で相談していただくことをお勧めします。今の状態をきちんと評価したうえで、ナイトガードが必要かどうか、必要だとしたらどのタイミングで作るのがよいか、一緒に考えていきましょう。
群馬県みどり市で歯ぎしり・食いしばりやナイトガードについて相談できる歯科医院をお探しの方は、かとう歯科へお気軽にご相談ください。現在のお口の状態や生活背景を丁寧にお伺いし、無理のない形で歯とあごを守るお手伝いをいたします。
群馬県みどり市大間々町にある歯科医院
『かとう歯科』
住所:群馬県みどり市大間々町大間々566−1
TEL:0277-46-6480


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