お知らせ
お子さまの虫歯予防ガイド|フッ素・シーラント・仕上げみがきの基本

こんにちは。歯科医師の加藤です。
診療をしていると、子育て中のママ・パパから、次のようなご相談を本当によく伺います。
「仕上げみがきは、いつまで続けたほうがいいですか」
「フッ素は安全なのでしょうか。人によって言うことが違って不安です」
「シーラントを勧められたのですが、本当に必要なのか判断がつきません」
むし歯になってから治療するよりも、そもそもむし歯を作らないことが一番です。ただ、現実には仕事や家事、育児に追われる毎日のなかで、理想どおりのケアを続けるのは簡単ではありません。「わかってはいるけれど、続けられない」「情報が多すぎて、正解がわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、小児歯科を担当する院長として、子どものむし歯ができる仕組み、フッ素とシーラントの基本的な役割、年齢別の仕上げみがきの考え方、そして日常生活でまず見直してほしいポイントについて、できるだけ分かりやすくお話しします。
専門的な内容も含みますが、難しい用語はできるだけかみ砕いて解説します。「完璧」をめざすのではなく、「今日からここだけは意識してみよう」と思えるヒントを見つけていただけたら嬉しく思います。
目次
- 1 子どもの虫歯予防でいちばん大切な視点とは
- 2 子どものむし歯ができる流れをやさしく解説
- 3 フッ素の役割と安全な使い方
- 4 シーラントによる奥歯のむし歯予防
- 5 年齢別に見る仕上げみがきのポイント
- 6 毎日の生活で見直したい習慣と、よくある思い込み
- 7 かかりつけ歯科を味方につけた予防の進め方
- 8 まとめと受診の目安
1 子どもの虫歯予防でいちばん大切な視点とは
子どものむし歯予防というと、「歯みがきをしっかりすること」や「甘いものを控えること」が真っ先に思い浮かぶかもしれません。もちろんどちらも大切ですが、私が診療の中で特にお伝えしたいのは、「ご家庭の生活リズムに合わせた、続けやすい予防スタイルを一緒に考えること」です。
理想だけを並べると、どうしても現実とのギャップが生まれます。お仕事で帰りが遅くなる日がある、お子さまがイヤイヤ期で口をなかなか開けてくれない、兄弟姉妹の世話で毎晩バタバタしてしまう。こうした状況は決して珍しいものではなく、多くのご家庭で起きています。
そのなかで、「毎日完璧に」ではなく、「ここだけは守ろう」というポイントを絞っていくことが、予防を長く続けるうえでとても重要です。フッ素やシーラント、仕上げみがきは、そのための道具であり、すべてを一人で抱え込まなくてよいように歯科医院がサポートする手段でもあります。
2 子どものむし歯ができる流れをやさしく解説
むし歯予防を考えるうえで、「なぜむし歯ができるのか」を知っておくことは、大人にとっても大きなヒントになります。
むし歯は、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)の中で、細菌が糖分を分解して酸を出し、その酸によって歯が溶かされていく病気です。歯の強さ、口の中の細菌の量、糖分の取り方、そして時間の経過、この四つの要素が重なり合って、むし歯のなりやすさが決まります。
お子さまの歯は、大人と比べてエナメル質が薄く、まだ完全には成熟していない状態です。つまり、酸に対する抵抗力がやや弱く、同じ条件なら大人よりも早くむし歯が進んでしまう可能性がある、ということです。
特に、歯が生え始めて間もない時期や、六歳臼歯などの永久歯が顔を出してきたばかりの時期は、表面が未熟でむし歯になりやすい「狙われやすいタイミング」です。この期間をどのように乗り切るかが、その後の口の健康に大きく関わってきます。
フッ素やシーラントは、この「狙われやすいタイミング」を少しでも安全に乗り切るために用いる、補助的な予防手段だと考えていただくと分かりやすいかもしれません。
3 フッ素の役割と安全な使い方
3-1 フッ素が歯にしてくれる三つの働き
「フッ素」と聞くと、なんとなく体に悪いイメージを持たれている方もいれば、「むし歯予防に良い」と聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
歯科でいうフッ素は、正しい濃度と方法で使うことで、主に次のような働きが期待されています。
一つ目は、歯の表面を酸に溶けにくくすることです。歯のエナメル質にフッ素が取り込まれると、「フルオロアパタイト」という構造が増え、酸に対する抵抗力が高まるとされています。
二つ目は、初期のむし歯の再石灰化を助けることです。むし歯は、最初から穴があくわけではなく、目に見えないレベルで「歯の表面からミネラルが少しずつ抜けていく」ことから始まります。フッ素は、抜けてしまったミネラルが戻る過程を後押しし、初期段階であれば進行をゆっくりにしたり、状態を安定させたりする手助けをします。
三つ目は、プラーク中のむし歯菌の働きをおだやかにすることです。細菌が酸を出しにくくなることで、むし歯のリスクを下げる方向に働くとされています。
いずれも、「フッ素だけでむし歯が完全に防げる」という意味ではなく、「日々のケアと組み合わさることで予防効果が高まる」と理解していただくとよいと思います。
3-2 ご家庭でのフッ素利用と歯科医院でのフッ素塗布
フッ素の利用には、ご家庭で毎日使う方法と、歯科医院で定期的に行う方法があります。
ご家庭では、フッ素配合の歯みがき剤が代表的です。年齢に応じた濃度や量の目安があり、特に小さなお子さまの場合は「使う量」と「うがいの仕方」が大切になります。例えば、歯みがき剤をたくさん出しすぎるよりも、適量を歯の表面にしっかり行き渡らせることの方が、予防の観点からは意味があります。
歯科医院で行うフッ素塗布は、ご家庭で使うものよりも高い濃度のフッ素を、一定の間隔で歯の表面に塗布する方法です。年齢やむし歯のなりやすさに応じて、三か月〜半年ごとなど、適切なペースを相談しながら決めていきます。
安全性について不安がある方には、具体的な濃度や使用方法、国内外での使用実績などもお話ししながら、一緒に判断していきます。「心配だけれど気になっている」という段階で遠慮なく質問していただいて構いません。
4 シーラントによる奥歯のむし歯予防
4-1 シーラントが適している歯とタイミング
シーラントは、奥歯の噛む面にある深い溝を、あらかじめ樹脂で埋めておくことで、食べかすやプラークがたまりにくくする予防処置です。
奥歯の噛む面は、山と谷のように凹凸があり、特に生えたばかりの歯は溝が深く、歯ブラシの毛先が届きにくい構造になっています。そこに糖分を含んだ食べかすが残り続けると、むし歯になりやすくなります。
シーラントが特に効果を発揮しやすいのは、最初の永久歯である六歳臼歯や、その前後の乳臼歯です。これらの歯が顔を出してきたタイミングからしばらくの間は、むし歯になりやすく、かつお子さま自身の歯みがきではケアしきれないことが多いため、シーラントを検討する価値が高い時期と言えます。
処置自体は、歯の表面をきれいにして乾かし、液状の樹脂を流し込んで光を当てて固める、比較的短時間で終わるものです。歯を大きく削るわけではありませんが、歯の状態を診断したうえで行う必要があります。
4-2 シーラントの限界と注意点
シーラントは有効な予防手段の一つですが、万能ではありません。
まず、シーラントができるのは「まだむし歯が進行していない溝」が基本です。すでに見た目でわかるようなむし歯がある場合は、シーラントだけで対応することはできません。
また、シーラントの樹脂は、長年の使用や強い噛み合わせによって一部が欠けてしまうことがあります。そのまま気づかずに時間がたつと、欠けた部分から汚れが入り込み、見えないところでむし歯が進んでしまうこともあります。
そのため、シーラントは「一度入れたら終わり」ではなく、「定期検診で状態をチェックし、必要に応じて補修するもの」と考えることが大切です。定期的なメンテナンスを前提に活用していただくと、シーラント本来の力を発揮しやすくなります。
5 年齢別に見る仕上げみがきのポイント
5-1 乳幼児期(仕上げみがきの習慣づけ)
乳歯が生え始めた頃からしばらくは、保護者の方による仕上げみがきが中心になります。この時期の目標は、「むし歯を防ぐこと」と同時に、「口の中に手や道具が入ることに慣れてもらうこと」です。
この段階で大切なのは、完璧な清掃を目指すよりも、短い時間でも毎日続けることです。遊びの延長として歌を歌いながら行う、みがき終わったらたくさん褒めるなど、「歯みがき=嫌な時間」にならない工夫が非常に重要です。
5-2 就学前〜低学年(自分みがきとの両立)
幼稚園〜小学校低学年頃になると、自分で歯ブラシを持ちたがるお子さまが多くなります。自分みがきの意欲は大切にしながらも、そのまま完全に任せてしまうと、どうしても磨き残しが多くなります。
この時期は、「まず自分でみがいてもらい、そのあと大人がチェックして仕上げをする」という二段階のスタイルがお勧めです。お子さまの前で鏡を使用しながら、「ここに少し汚れが残りやすいね」「奥の歯がもう少しだね」と声をかけつつ、一緒に確認していくことで、自分の磨き癖を本人が理解しやすくなります。
5-3 高学年〜中学生(自立を促しながら見守る段階)
高学年以降になると、部活動や習い事、塾などで生活が忙しくなり、歯みがきの時間が不規則になりがちです。この時期は、保護者の方が直接仕上げみがきを行うことは少なくなっていきますが、「夜だけは必ず磨く」「特にここは気をつける」といったルール作りが大切です。
とくに、飲み物の選び方やだらだら食べの習慣は、この年代で定着しやすくなります。歯みがきそのものだけでなく、「どんなタイミングで何を口にしているか」を一緒に振り返る時間を持つことが、将来の口の健康を守る大きな投資になります。
6 毎日の生活で見直したい習慣と、よくある思い込み
フッ素やシーラント、仕上げみがきがしっかりできていても、日々の習慣が歯に大きな負担をかけていると、むし歯のリスクはなかなか下がりません。
よくあるのが、「飲み物なら大丈夫」という思い込みです。ジュース、スポーツドリンク、甘い乳酸菌飲料などを、時間を決めずに少しずつ飲み続けると、歯が長時間酸にさらされた状態になります。これは、お菓子をずっと食べ続けているのと同じように、むし歯にとって好ましくない環境です。
また、「乳歯はいずれ抜けるから、多少むし歯になっても構わない」という考え方も注意が必要です。乳歯のむし歯が進行すると、痛みや腫れだけでなく、その下で育っている永久歯の生え方や歯並びに影響することがあります。乳歯を大切に守ることは、その後の永久歯を守ることにも直結します。
さらに、「仕上げみがきのときだけ完璧にできていれば、昼間は適当でも大丈夫」という感覚も、少し現実とずれがあります。学校や園での食事やおやつ、習い事の前後など、昼間にも歯に負担がかかる場面は多くあります。すべてをコントロールすることは難しくても、「水やお茶をこまめに飲む」「甘いものを食べる回数を減らす」といった、小さな工夫は十分に可能です。
7 かかりつけ歯科を味方につけた予防の進め方
子どものむし歯予防は、ご家庭だけでも、歯科医院だけでも完結しません。両方が役割を分担しながら取り組むことで、はじめて無理なく続けられる形になります。
定期検診では、歯や歯ぐきの状態をチェックするだけでなく、歯の生え変わりの状況、噛み合わせ、仕上げみがきの様子、食習慣なども含めて総合的に確認していきます。そのうえで、「今の年齢と状態なら、ここを重点的に守りましょう」「この一年は、こういう習慣を目標にしましょう」といった形で、段階的な予防プランをご提案します。
フッ素塗布やシーラントは、そのプランの中の一部です。「勧められたから何となく受ける」のではなく、「どういう理由で、このお子さまにこの処置を提案しているのか」を、できる限り言葉にしてお伝えするように心がけています。納得して選んでいただくことが、お子さま本人の協力や、その後の通院の継続にも良い影響を与えます。
また、痛くなってから初めて歯科に行くのではなく、「痛くなる前から定期的に状態を確認しておく」ことも、長い目で見ればお子さまの負担を減らします。治療の必要がない時期にこそ、椅子に座ったり器具を見たりする経験を積んでおくことで、いざ治療が必要になったときにも落ち着いて対応しやすくなるからです。
8 まとめと受診の目安
フッ素、シーラント、仕上げみがき。どれも、単独で魔法のような効果を持つものではありませんが、毎日の生活の工夫と組み合わさることで、お子さまのむし歯リスクを着実に下げていく力を持っています。
完璧を目指そうとすると、「できない自分」を責めてしまいがちです。そうではなく、「わが家ではまずここを大切にしよう」という、家庭ごとの優先順位を一緒に考えていくことが大切です。夜の仕上げみがきを丁寧にすること、甘い飲み物を飲む回数を見直すこと、定期検診を家族の予定に組み込むこと。そのような小さな一歩の積み重ねが、将来の大きな差につながります。
次のような状況があれば、一度歯科で相談していただくことをお勧めします。
・仕上げみがきをしようとすると強く嫌がる日が続いている
・同じ場所にむし歯が繰り返しできてしまう
・フッ素やシーラントについて、説明を聞いても不安が残る
・飲み物やおやつの習慣が気になっているが、どこから変えればよいか分からない
専門家の視点を借りながら、「そのご家庭らしい予防スタイル」を一緒に作っていければと思います。
群馬県みどり市でお子さまの虫歯予防について相談できる歯科医院をお探しの方は、かとう歯科へお気軽にご相談ください。現在のお口の状態や生活背景を丁寧にお伺いし、ご家族と一緒に無理のない予防のかたちを考えてまいります。
群馬県みどり市大間々町にある歯科医院
『かとう歯科』
住所:群馬県みどり市大間々町大間々566−1
TEL:0277-46-6480


前へ
